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『僕の神様』12話 交野新聞連載小説

僕の神様 12話

卓球部の部活が終わり、僕は自転車に乗って帰宅を急いでいた。
べつに用があるわけじゃないけど、お腹が空いていたからね。
キッチンのテーブルの籠に、バナナがあったし冷蔵庫にプリンがあるハズだった。
数ヶ月前のこの時間は薄暗かったけど、真昼のように陽が高かった。
もう、夏が近かった。

学校橋を渡っていると、河川敷に伸ちゃんとだーうえの姿が見えた。
ふたりとも、川に石を投げて水切り遊びをしている。
平べったい石を投げ、ピョンピョンと石が跳ねているのが見えた。
僕は、橋を渡ると自転車を置いて土手を下りながら、伸ちゃんに声をかけた。


「昨日、キムジーって人が来てたよ」
と、河原に降りると僕は伸ちゃんに言った。
「カメラマンの人ね」
「カメラマンじゃないみたい」
「当選確実な写真を撮ってくれるって神様が言ってたよ」
「なんで、だーうえと遊んでるの?」
「遊んでない。選挙の相談にのってたんや」
と、だーうえが答えた。

「俺は、生徒会長やからな」
「だーうえも、選対委員になってもらおうと思って」
と、伸ちゃんが言った。
「カタノ市の市長選やで」
と僕が言うと、
「俺は、厳しい選挙戦を勝ち抜いた男やで」
と、だーうえが言った。

そういえば、神様はこの川で何かを探してことがあったな。
僕は平たい石を拾って、水切りをしてみた。
石は、3回ぴょんぴょんぴょんと水面を跳ねて潜った。
「下手くそやな」
と、伸ちゃんとだーうえがハモった。

「何やってんの?」
見ると橋の上から自転車に乗った、千夏が叫んでいるのが見えた。
「ウグイス嬢が来た」
と、だーうえが小声で言った。
土手を千夏が降りてくる。
「中学生が、選挙運動はダメでしょう」
と、僕が言うと
「ええんちゃう?」
と、伸ちゃんが言った。
いや、だぶん、ダメでしょ。

つづく

 

 

文:紙本櫻士

 

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