星新一 ショートショート『声の網』
コンピュータが電話回線を通して人間を観察し、アクションを起こすショートショートである。
黒電話の受話器が、そっと上がっていて、コンピューターが聞き耳を立てているのが不気味だった。
1970年に発表された小説だけど、いまでも、いまだからこをリアルに読める。
最近、スマートスピーカーを使った盗聴が問題になっている。
悪意あるハッカーがいれば、理論的に盗聴が可能らしい。
Amazonは、アップデートで解決していると言うが、安心はできない。
ずいぶん前だけど、スカイプを繋ぎっぱなしで利用していたことがある。
デザイナーなどと打ち合わせをしながら仕事ができるのが便利だったのだ。
である時、僕は中国の国家主席について(なんとなく)調べていたことがある。どうやって、その地位に上りつめたのか興味があったのだ。
さらに地方長官や警察関係など、詳しく調べていると、スカイプにメッセージが飛んできた。
「私は、重慶の大学に通う女子大生です。いま、あなたは何をしていますか?」
僕はどうしようか迷ったけど、返事をしてみた。
「ネットで中国の新聞を読んでいたんだ」
「面白い記事はありましたか?」
「とくには、重慶はどんな街ですか?」
などと、あたりさわりのない会話を続け30分くらいやり取りをした。これはこれで、結構楽しい時間だった。
それから、定期的にその女子大生からメッセージが来るようになった。彼女は、日本語を勉強しているという。
彼女からのメールには、中国で流行っている音楽が添付されていたり、火鍋の写真があったり…。
でも、彼女は女子大生ではなくて、軍服をきた諜報機関の人間であるように思えてならなかった。3ヶ月位、やりとりは続いたけど、ある時からプツリと連絡は途絶えた。
僕が、スパイではないと分かったのだろうか?
iPhoneのSiriや、Amazon ECHOを使っていると、どこかで聞き耳を立てている「誰か」を想像してしまう。
絶対、誰かが聞き耳立てているよね。たぶん。
文:紙本櫻士
https://komezensen.jimdofree.com/
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