ほしいものが、ほしいわ。1988年 西武百貨店。

なんでもあった。

 

1960年代、日本で一番人口が多かったのは20代の若者である。

いわゆる、団塊の世代だ。

 

池田勇人首相の所得倍増計画が推し進められ、高度成長期で日本がグツグツと沸騰し始めたのが1960年代だと思う。

商品を売るターゲットは、一番人口が多い若者である。

若者はロックを聴き、若者がミニスカートが流行り、若者たちの中にヒッピー族が現れる。

彼らが落ち着き、結婚する頃にはクルマや家やテレビ、冷蔵庫などが飛ぶように売れた。

 

東芝や松下、ソニーなどが、急成長する原動力は若者たちの物欲だったのではないか。

欲しいものが、若者にはいっぱいあったのだ。

 

1970年代になると、20代だった若者たちが30代になる。

でも、ターゲットは30代になるかというとそうでもなく、相変わらず20代をターゲットにした戦略が続いていた時代のように思う。

30代になった団塊の世代も、20代の気分を引きずっていたのかもしれない。

1970年『an・an』が、若い女性をターゲットに平凡社から出版される。翌年、『non-no

』集英社から登場する。

次第に、ファッションも洗練されていった。

 

余談だけど洗濯機の登場で、女性が洗濯という重労働から開放された結果、ウーマンリブが起こると分析した記事を読んだことがある。

洗濯機という家電の台頭と、女性の進出が一致するのは偶然ではないのだろう。

 

1970年代まで、若者はよいモノは選らばないと手に入らなかたけど、1980年代になると何を買ってもよい製品が手に入るようになる。もはや、選ばなくてもいい。

部屋を心地よい空間で満たすことが、(そんなに頑張らなくても)できるようになる。

80年代の若者たちは、心地いい音楽や小説が欲しかった。

モノは、もう最重要ではない。

山下達郎や、大滝詠一、村上春樹が、若者のアイテムに加わった。

モノよりここちいい環境なのだ。

 

団塊の世代は、もう、40代で、家も買ったし、クルマもあるし、ロレックスも頑張って買った。欲しいモノはすでに手に入れている。

家のローンがたっぷりあるけどね。

西武百貨店が「ほしいものが、ほしいわ」と、キャッチフレーズをデパートの壁面いっぱいに巨大ポスターを貼ったのはこの時代である。

もう、百貨店は若者に何を売っていいか分からないのだ。

とはいえ、

「じゃぁ、子どもたちの教育にお金を使ってもらおう」と、予備校や塾が元気だったのも、1980年代である。

 

2000年代になって、団塊の世代は70代になった。

その子どもたちは50代から60代である。

20代の若者は、ターゲットそしては少数派だ。

テレビドラマを見ても、若者たちが活躍するシナリオは少ないし、若者向けの製品も元気がないよう思える。米倉涼子、佐藤浩市、堺雅人など、一線で活躍する俳優も20代ではない。新垣結衣も、アラサーだったりする。

 

若者は、好奇心に溢れ元気いっぱいなのは、今も昔も変わらない。

そこに向けて商品を開発したり文化を作るのは、楽しい。

「ほしいものが、ほしいわ」の先に、僕たちは何を求めているのか?

鎌倉時代なら新しい宗教だったりしたかもだけど、それはなさそうだ。

現在、ワクワクより安心がキーワードのような気もしている。

みんな年を取って不安なのだ。たぶん。

3000年生きるであろう僕は、ワクワクしていたいけどね。

 

文:川はともだち 代表 紙本櫻士

 

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