香港の友人。
「もう、ぜんぜん契約を守らないんだ」と、香港から来ている吉田が言った。
吉田とは高校時代からの友人で、ずっと、香港の日系企業で働いている。
たまに日本に帰国すると、飲みに出かける。
「さんざん商品を発注しといて『支払う金がない』と、と平気で言ってくる」
吉田は、外人が肩をすくめる動作をしながら言った。
「お金がないの?」
「払いたくない。が、正しいね。で、また注文してくる」
「払ってないのに?」
「払ってないのに」
吉田はそう言うと、生ビールを飲み干した。僕は、店主に「もう一杯」と注文をする。
「すごいだろ。アジア」
「欧米はどうなの?」
吉田は、アメリカでも仕事をしているので訊いてみた。
「アメリカ人は契約を守るよ。ただ、契約がものすごく細かい。この場合はどうする? といった想定を山ほど契約書に盛り込むんだ」
「それも大変だな」
「そんなもん」
焼き鳥が出てきた。炭の香りがプンと漂う。
久しぶりの日本の焼き鳥が嬉しい。と、吉田が言った。
「中国はだめか?」
「言うとおりにすると、ケツの毛まで抜かれるね」
以前、このブログで「基本、性善説」と僕は書いたけど、かなり危険な考えのようだった。
「ビジネスは食うか食われるか、と思ってやったほうがいいよ。何されるか分からないくらいが、丁度いい」
「アジアと仕事してるの?」と、吉田が僕に訊いてきた。
「契約が紙切れみたいな人たちを相手にしている」
「日本もアジアだからなぁ」
そう言うと、吉田はビールをひとくち飲んでしばらく黙った。
なにか思い出しているのかもしれない。
最近、契約について考えることが多い。
会社が次の段階に来ているのかもしれない。
どうだろう?
文:川はともだち 代表 紙本櫻士
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