契約は大事だよ。

主張しないと守られない。

 

フリーランスでライターの仕事をしていると、たまに出くわすんだけど、支払いになって値切られたり、支払ってもらえなかったりね。半額なんて可愛いもんである。

 

僕が書いた原稿料を使い込んでしまって、支払えなくなった編集者もいた。150万円くらいで僕には大金である。その人は支払う気がないのに、ビックリしたのを覚えている。

何度、原稿料を催促しても「来週払う」と言われ続け、最後に根負けしてしまった。

「もう、いいや」って。

この件は、いまでも悔しい。

でも、問題の本質は「契約をしていない」という僕の姿勢なのだ。

「急ぎの仕事なんだけど、できるかな。資料は送っといたよ」

と、クライアントに言われた場合。

「契約書も一緒に送っといてください」という習慣が僕にはない。

 

例えば、『ぷよぷよ』という落ち物パズルゲームを開発販売していた、コンパイルの広告を書いたことがある。90年代のことだ。

僕は二ヶ月くらい、パンフレット、ポスターや製品説明のコピーを書いた。

で、休憩中にテレビを見ていたら「コンパイルが倒産しました」というニュースが流れてきた。

「どっかで聞いたことある会社だな」と思っていたら、いま僕が(急ぎで、徹夜して)書いている広告のクライアントではないかと、気づいた。

 

「ニュースをみたんですけど、この仕事はどうなるんですか?」と、僕は担当者に電話で訊ねてみた。

「締切が近いから、一応、明日までに提出してよ」と、担当者が言った。

ビジネスライクにである。

それはそうかもしれない、と僕は電話を切った。

で、急ぎ徹夜仕事の続きである。

「コンパイルの仕事はなくなったよ」と、担当者から連絡があったのは一週間後だった。

この仕事は、それで終わり。

契約を交わしてないから、僕が好きで原稿を書いたことになっている(らしい)。

反論もできない。

それが現実だった。

 

コンパイルの例は極端かもしれないけど、油断していると地雷があるのだ。

例え契約を交わしていても、きちんと主張しないと履行されない場合も多い。

ビジネスの世界は、切った張ったのきびしい渡世なのかもしれない。

フリーランスは、それなりに気楽だったけど。

 

文:川はともだち 代表 紙本櫻士

 

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