夜が怖い。
マンハッタンは、22時を過ぎると店がどんどん閉まり、人通りが一気になくなる。遅くまで店を開けるには度胸が必要だと思う。
深夜、51ストリートを歩いていると、犬を連れた黒人の爺さんに「タバコ持ってないか?」と、声をかけられた。
かなり酔っているように見え、物騒な感じだ。
すれ違う人の、雰囲気も昼間とは随分違うように思えた。
マンハッタンの夜は、日本とは違う緊迫感が漂っている。
ボストンのコモン公園も、22時を過ぎると危険らしい。
マリファナを吸っている人や、酔った人が集まってくるという。昼間は楽しげな場所だったチャイナタウンも夜は危ない。なるべく近づかない方がいい、地下鉄の路線もある。
街灯もあるから、真っ暗でもない。
月だって出ていると、なにげに明るい。
特に、危ないことはなさそうに見える。
それでも、アメリカの夜は怖いと感じた。
きちんとした理由が不明だ。
ことによると人種の坩堝が、怖さを増幅しているのかもしれない。
得体の知れない、なにか。
「アメリカで月見をしたい」と思いながら取材をしたけど、日本のように月見を楽しむ場所がなさそうだった。
例えばだけど、たまにアメリカの映画やドラマで船上パーティーをしているシーンに出くわす。
船の上で危ない人の入場を制限しながら、夜のパーティーを楽しんでいるのではないか? と、思える。
どうだろうか? ネイティブの人にその辺の事情を聞きたい。
月見は日本の収穫祭だけど、アメリカの収穫祭はハロウィンだったりする。
10月31日は夏の終わりで、死者の霊が家族を訪ねてくる日だ。日本のお盆みたいに。
11月1日から長い冬が始まる。
北米の冬は厳しいから、特別な思いがあるのだろう。
アメリカのお盆でも、おばけや幽霊が漂っている。
ここではおばけより、人が怖い。
月を愛でる余裕がない。
アメリカの夜は、どうも危なっかしいのだ。
月見をやるとしたら、やはり船の上かもしれない。
文:川はともだち 代表 紙本櫻士
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