摩天楼の幻想。

マンハッタンは、意外と狭かった。

 

ニューヨークに行くまで、マンハッタンは巨大な大都会だと思っていた。

アメリカは、ハンバーガーも大きく、人間も大きく、ペットボトルも大きく、何もかもお大きい。そう思っていた。

これは、大体合っている。

でも、マンハッタン島は意外と狭く小さいののだ。これは、行かないと体感できなかった。

 

僕たちが泊まったのは、ミッドタウンに位置するポッド51というホテルである。

文字通り真ん中あたりあって、どこへ行くにも便利なホテルだった。

ブロードウェイにも、セントラルパークへも歩いてすぐだ。

 

iPhone片手に街を歩いていると、高層ビルとビルの間が殆どないのに気づく。

窓を開けたら、隣のビルの窓、という古い建物も沢山目についた。日本と建築の法律が違うのだろうけど、大きな理由は土地がない、ということだと分かる。

それだと、上に伸びるしかないではないか。

道路は、至るところで工事をしている。地下から吹き出ている蒸気は、暖房に使うスチームに穴が開いているからだという。もはや、ニューヨーク名物である。

「空き店舗が結構あるね」と、広瀬が言った。

『BENTO』と大きな看板があって、弁当を売っている店の隣が、小さな空き店舗でいますぐ何かのお店ができそうだった。弁当は、アメリカでも弁当なんだね。なるほど。

で、ステージキッズのお店を出せば、たちまちニューヨーク支店の出来上がりである。

実現すれば、ひとつの虚構かもしれない。

 

例えばブロードウェイで一発当てれば、世界のスターも夢じゃない。アメリカンドリームは、確かに存在する。

ピンポイントだけど、マンハッタンで話題になると世界に発信される。

ビジネスをやっている人にはメリットだと思う。

 

ただ、こうも思う。

実は世界中の人たちが、ニューヨークに幻想を抱いてるんじゃないかと…。

この街のことはよくは分からないけど、人々の虚構と現実、そして欲望や希望がフィッツジェラルドの時代から、今なお生き続けているのではないか、と僕は歩きながら考えていた。

 

文:川はともだち 代表 紙本櫻士

 

千人の月見の宴

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