打ち上げは、領事館で。

右翼か!

 

ジャパン・フェスティバル・ボストンの打ち上げに参加した。

ボストンの街は、どこでも地下鉄で行けると思っていたので、

「どこの駅で降りたらいい?」と、フェスティバル委員長の青谷さんに僕は訊いた。

「電車ではちょっと無理です。ボストン美術館駅あたりからタクシーで行くといいかもしれません」

住所を見ると、ボストン郊外である。

 

「道はそんなに難しくないよ」と、地図を見ながら僕は事務局の広瀬に言った。

「日本でも迷う人の言うことはあてにならない」と、広瀬が言った。

「9号線をまっすぐ走って、山田池公園を過ぎたら左折して、ゴルフ場の入口あたりに行けばいいんだ」

「ボストンに山田池公園はねーだろ」

「あるんだよ。なんとか池が」

 

ボストン郊外の地図を見ると、大きな池とゴルフ場が目印だったのだ。

青谷さんに言われた通り、ボストン美術館までは電車で行った。

ボストン美術館では、運良く客待ちタクシーがすぐに拾えた。

後部座席から運転手さんに紙に書いた住所を渡すと、すぐに行き先が分かったらしい。

「ここからどれくらいですか?」と僕が訊くと、

「30分くらいかな」と、教えてくれた。

 

しばらく走ると、タクシーは別荘地のような建物が点在する森に入った。

「ここだよ」と、タクシーの運ちゃんが門に入ってから言った。

見ると、大きな日本の国旗と菊の紋章が刻まれた屋敷が建っていた。

「右翼か?」と、広瀬が言う。

 

駐車場から歩いてきた白人の男性が、Hi! と僕たちに手を降ってドアを開けて入っていった。

後に続いてドアを開けると、受付に日本人がいてほっとする。

ここは日本領事館だと言う。確かに、飾り棚に天皇陛下の写真や皇太子殿下の写真が飾ってあった。普通の家ではない。もちろん、右翼でも。

Tシャツにジーンズの僕は、なんだか場違いな感じだった。

まぁ、いつもの格好なんだけど…。

 

京阪紙工の住谷社長夫妻は、先に到着していた。

ワイン片手に『千人の月見の宴』のパンフレットを見せ、僕たちの祭りの説明をしているようだった。歌手の原田真二さんが来る予定だったらしいけど、風邪で欠席。歌が聞けなくてちょい残念である。

 

青谷さんが、来賓を紹介してくれた。

全米でイベントをやっているH氏や、ワシントンの桜まつりの女性委員長もいて、僕たちのステージキッズの話をすることができたのがありがたい。アメリカのイベント事情の話も聞けた。

「マンハッタンは、絶対レンタルだね」と、H氏は言う。

「どうして?」

「土地がないからさ」

「アメリカって冬が厳しくて、暖かくなると全米でイベントをやるの。それに使えるわ」と、ワシントンサクラ委員長が言った。

僕は、ワインを飲みながら興味深く聞いていた。

 

「ニューヨークでパレードをやっているんだけど、車に積む土台がとても重いの。それにも使えそうね」

アメリカにステージキッズの市場がありそうだった。

アメリカ人に向いているのかもしれない。大雑把な商品だしね。

 

ところでワシントンで月見をしたい。と、僕は思っていた。

なんの根拠もなく最初から言っていたんだけど、それはちょっと無理らしい。

アメリカの夜は、危険なのだ。

ニューヨークもボストンも、夜10時になると店が閉まる。人出がなくなった街は、物騒だった。

 

「ボストンに来たときは協力します」と、道井総領事が言った。

アメリカで売りたい、と僕が話したのである。

でもね、アメリカへの道は遠いのだった。

 

文:川はともだち 代表 紙本櫻士

 

千人の月見の宴

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