空前のクラウドファンディング・ブームである。
僕のなかでだけど。
流行っていると聞いたのは一昨年くらいで、自分がやるとは思っていなかった。広く浅く、みんなから資金を集めて、事業を成功させる新しい夢のシステムらしい。
「そいつは素晴らしい」と、僕は思った。
で、どうする?
で、とりあえず友だちに聞いてみた。
僕は、一昨年から『千人の月見の宴』というイベントを淀川河川公園枚方地区でやっている。それをクラウドファンディングでできないか? という相談である。
「甘くないよ!」と、僕の話を聞くなりイタメシ屋のマスターは言った。
彼は、最近クラウドファンディングをやったのだ。
失敗だったらしい。
「ちっとも売れなかったんだ」と、長袖の白いコックコートを着たマスターが言った。お腹のあたりに、デミグラスソースのシミがついている。
作ったのは、シュークリームの作り方が分かるDVDだった。
「画期的なシュークリームだったし、みんな知りたいと思ったんだ。お店の裏技だってある。でも、売れなかった。シュークリームの歌のCDつきで、15万円のクラウド」
「いくら集まったの?」
「2万3千円だね」と、マスターは言った。
終わったクラウドファンディングのページを店のパソコンで、マスターが見せてくれた。
動画はあるし、写真もキレイだし、文章もちゃんとしてる。
しかも近くの大学とのコラボだった。
3万円いかない理由が、僕には分からない。
「シュークリームは、そんなにダメかな」と、マスターは残念そうに呟いた。
「CDの歌は、必要なの?」
「それはいるよ。ちゃんとプロの有名ミュージシャンが歌ってるんだ」
クラウドファンディングは手強い。
ああ、今日から、僕たちの挑戦が始まる。
文:月見の宴実行委員会 代表 紙本櫻士